養育費払わないとどうなる?銀行情報などで債権差し押さえ
最高裁が2019年12月、全国の家庭裁判所で用いられる養育費の算定表を16年ぶりに改定し、高所得世帯を中心に養育費が増額されることになりました。
過去に取決められた養育費が増額になることはないと解釈されています。
一方で、取り決めたはずの養育費の不払いが社会問題となっています。
養育費の不払いは本来、強制執行手続きにより、裁判所を通じて相手方の資産から強制的に回収するのが法律の建前となります。
ですが、相手方の資産が分からない場合、強制執行のしようがありません。
そのため2019年5月、民事執行法が改正されて「第三者からの情報取得手続き」という制度が新設されました。
法改正で第三者から債務者の情報を取得
取得が可能となるのは、以下の3つです。
(1)債務者所有の不動産情報
1つ目は、登記所から取得する債務者所有の不動産情報です。
まず登記所とは、土地や建物の所在や権利関係などを管理している国の機関になります。
これによって不動産の権利が守られ、円滑な不動産取引が可能となります。
この「債務者所有の不動産情報」を照会するための前提として「財産開示」という手続きを裁判所に申し立てる必要があります。
財産開示とは、債務者を裁判所に呼び出して、債務者に質問をして財産の有無や所在を確認する手続きです。
申し立てるには、判決や調停調書などをすでに取得しており、債務者に対して強制執行を行ったのに満額の弁済を受けられなかった債権者に限られます。
しかも簡単に使える手続きではなさそうです。
この財産開示に至るまで、債務名義を得るのに1回、強制執行で1回、この2回は裁判所を利用していることが前提となります。
そして財産開示で3回目、それでもなお債務者の財産が明らかにならない場合に初めて使えるのが第三者からの情報取得手続きになるので、ここに至るまでに合計4回、裁判所を利用することになります。
また実際は、養育費を支払わず、行方も分からない相手が価値のある不動産を所有している可能性はそれほど高くないかもしれません。
(2)債務者の勤務先情報
2つ目は、住民税の源泉徴収をしている会社の名称を把握している市町村 や 厚生年金を納付している会社を把握している年金機構 から取得する債務者の勤務先情報です。(長いですね・・・)
要は税金や年金を納めている機関から「債務者の勤務先情報」を取得することで、こちらも(1)同様、照会のための前提として「財産開示」が必要になります。
この手続きにより債務者の勤務先が判明した場合、給与債権を差し押さえることになります。
給与は債権者の生活に不可欠なため、原則として毎月の給与額の4分の1までしか差し押さえができないのが原則ですが、養育費債権については範囲が拡張されており、2分の1まで可能となっています。
(3)債務者の有する預貯金などの金融資産の情報
3つ目は、金融機関や振替機関などから取得する債務者の有する預貯金などの金融資産の情報です。
この「金融資産の情報」については財産開示を経ていなくても可能であり、改正法施行後はこの手続きが大いに利用されるのではないかと予想されます。
銀行預金に対する差し押さえを行う場合、債務者が保有している銀行の支店名まで債権者側で特定しなければ預金の差し押さえはできませんでした。
しかしこの改正法によって、各銀行の本店に照会をすることにより、債務者がどの支店に口座を保有しているか照会をすることが可能になりました。
以上が、養育費不払いに対する「第三者からの情報手続き」新制度の内容です。
(記事は2020年1月時点の情報)
改正法は2020年4月に施行されています。
養育費不払いの問題は新聞などでも目につきます。
離婚時の経緯や条件、当事者の感情などによって支払いを拒否しているケースもあるかもしれません。
ですが、それによって子供が不利益を被るのだけは避けなければならないと個人的には思います。
・・・ちなみに私も算定表に基づいて決定した養育費を毎月支払っています。(゜_゜)