婚姻・離婚届の押印廃止へ!?【署名は維持】
2020年10月9日、法務大臣が記者会見で、婚姻届や離婚届の押印廃止を検討していることを明らかにしました。
菅内閣が進めるデジタル化の推進により、全省庁において行政手続き見直しの方針が出ています。
国民の利便性向上、効率性アップが目的であり、押印廃止の流れもこれによるものです。
各省庁でのハンコ使用の見直しを求めた結果、これまでに全体の9割超が廃止できる見通しになっています。
婚姻届や離婚届は認め印でも可能で、廃止できると判断されたようです。
法相によると署名は引き続き維持されます。
世界のハンコ文化は?
海外ではそもそも印鑑は存在するのでしょうか?
日本ではハンコは日常的に使われています。
印鑑の種類もいくつかあります。
実印…ローン契約、土地購入などに使用
銀行印…銀行口座の開設、預金の引き出しに使用
認印…履歴書、婚姻届、免許更新、郵便物受け取り、会社業務などに使用
必要頻度が高いときに使う朱肉いらずのシャチハタもありますね。
人生の門出にも印鑑を贈る習わしがあったりと、やはり日本の文化の一つとしてハンコ文化は根付いています。
欧米のハンコ文化
欧米ではどうでしょうか。
アメリカやヨーロッパではハンコを使うことはほとんどありません。
ハンコ文化が欧米に伝わらなかった理由は諸説あります。
一番は、なにかを押し付けて記録するという概念が存在しなかったことだと言われています。
あるのは手紙の封書に使われるシーリングスタンプぐらいです。
一般人が重要な契約をするときはどうしているのでしょうか。
ハンコ文化がないため、契約書にはサインをします。
契約書に名前を書くときには、本人であることを証明する必要があり、日本では印鑑登録された印鑑を使うことで本人を証明できます。
アメリカではノータリー・リパブリックという役職の人が存在するようです。
重要な契約時に立ち会いをする第三者の立場の公証人のことです。
その公証人が、本人であることを認めるスタンプを押してくれます。
(結局ここで押すんかいっ!と言いたくなりますね。ちょっと回りくどいような気もします。)
公証人は会社の法務部、郵便局や銀行などにいます。
アジアのハンコ文化
そもそもハンコ文化は中国から日本に伝わったようです。
ですが中国では印鑑制度は存在せず、欧米と同様に契約はサインですませます。
韓国では1914年に日本から印鑑制度を導入しましたが、画数の少ないハングル文字ではハンコ偽造が絶えなかったため、2009年~2014年の間に廃止されました。
現在は電子認証を取り入れています。
台湾も1906年に日本から印鑑制度を導入し、いまでもその制度は残っています。
日本と台湾だけが今でもハンコを日常的に使っています。
日本は1878年(明治11年)に印鑑登録制度が始まり、今まで人々の生活に根付いていて当たり前のように感じますが、世界でもハンコを使う国がこんなに少ないのは驚きでした。
ハンコ文化で生きてきた日本人にとって、書類の押印を見ると、その書類の格式を感じて重々しい雰囲気を受け取るものです。
結婚はやはり人生の大きな節目です。
婚姻届の提出経験者としては、押印をすることで自分の決意を確認したり、新たな気持ちでスタートする誓いになったりと、儀式の意味合いもあると思うので少し寂しい気持ちはありますね。
ちなみに離婚時は、調停で離婚が決定したため夫婦押印署名の離婚届は不要、元ヨメが離婚届を役所に提出して受理されました。
特に押印したかったというわけではありませんが。(;^ω^)
印章にも存在価値を
余談ですが、押印廃止を受け、印章にも存在価値をと反発している地域もあります。
国内有数の印章産地である山梨県です。
山梨県の市川三郷町は「ハンコの里」と呼ばれ、今でも手彫り印章の製造が盛んです。
江戸時代にこの地でとれた水晶への加工が地場産業として発展、一時は全国の印章生産の過半を占めていました。
行政手続きのデジタル化には前向きだが、行政手続きに押印がいらなくなることと、ハンコが必要ないということとは違うというのが反発の理由です。
紙と印で決意を見せ合うことを望む人には紙の届けが望ましい、紙で対応したい人のニーズを切り捨てるのは適切ではなく、紙と電子の2本立てを考えることを主張しています。
文化の継承、便利さに負けない存在価値・・・印章産地ならではの主張かもしれませんが、賛成する方も少なくないと思います。
印章にも盗難リスクはありますが、電子認証なども同じリスクは否めません。
デジタル化という時代の流れに逆らえない部分はありますが、押印廃止よりも優先するべき改革、セキュリティ対策など周辺環境の整備もあわせて進めていただきたいものです。